さなみん

石をひとつ投げ込んでみる心のなか

豪雨

駅舎の外はすさまじい雨だった。 大半の降客は傘を持っていたが、それを開いて出ていくことも躊躇われて、屋根の下に留まり、どこか呆然といった面持ちで豪雨を眺めていた。 私の傘は折りたたみの脆弱なものだが、軽い決心をしてそのまま出た。 矢のごとき勢…

未雨

頭痛薬を飲んで、ついでに朝から開け放していた窓を閉めた。 雨はまだ降っていない。 雷鳴だけが、思い出したように轟く。 すこしだけ、寒気がする。 テレビ画面には、雹。 雪が積もったようになっている映像に季節を見失う。 スコップで掻いている半袖姿の…

夏至

夜が明けるのが一番早い日、と思っていた頃があった。 実際のそれは、もうすでに過ぎていて、夏至というのは、昼間の時間が一番長いということらしい。 いずれにしても、季節は真夏に向かっていくが、日没は早まり、夜は確実に長くなっていくのだ。 寝苦しい…

銀河系

週明け、私を乗せた宇宙船は、それまで日常を置いていた惑星を離れ、別の銀河系へと旅立つ。 わずかな光明を求めて、一気に闇を駆ける。 しかし、大抵は、光明など見えぬうちに、やむなく帰星する。 それでも、わずかであれ、こうして気持ちだけでも、逃がす…

中立は保身

私は、喧嘩両成敗は嫌いだし、しないと決めている。 大切な人たちが対立したら、自分にとってどっちも大事でも、必ず片方は捨てる。 泣きながら、詫びながら、切る。 そうやって、これまで友達を作ってきたし、関係を継続してる。 私もそうされてる。 中立は…

たったひとりで

旧約聖書の神さまは、もし10人正しい人がいたら、ソドムを滅ぼさないと言った。 私は、100人の優しい人がいても、1人の怖い人にやられてしまう。 ソドムは滅びた。 10人の正しい人もいなかったということなのか。 でもそれは、神さまにとって、ということだ…

いいひと

「いい人」とか「わるい人」とかって、あくまでも「自分にとって」ということ。 自分に害をなす人がわるい人で、なさない人がいい人だから、善悪なんてものは、まったく個人の基準による。 他のたくさんの人にとって、あの人はいい人なのだろう。 それは、被…

要らない

子供の頃は、猫とカメを飼っていた。 どちらも、偶然、うちに流れ着いたもので、元来生きものを飼うことに反対だった母も「やむなく」というところ。 独り暮らしになった友達は、みな、猫とか犬とかウサギとかを飼っている。 それまで両親の介護に追われてい…