銀河系
週明け、私を乗せた宇宙船は、それまで日常を置いていた惑星を離れ、別の銀河系へと旅立つ。
わずかな光明を求めて、一気に闇を駆ける。
しかし、大抵は、光明など見えぬうちに、やむなく帰星する。
それでも、わずかであれ、こうして気持ちだけでも、逃がすことで、私は精神の均衡を保っている。
私は、置き去りにした日常、まもなく戻らざるをえない惑星を、霞み見ながら思う。
あれもこれも、みな別の銀河系のできごとなのだ。
私とは、言葉も心も通じぬ生物が棲んでいるのだ。
その暮らしぶりも、欲しても叶いそうにない願いも、銀河系が違うから、しかたのないことなのだ。
だから、よその銀河系の暮らしと、自分を比べて嘆いても意味がない。
嫉妬や羨望などバカバカしいことだ。
私には、帰らなくてはならない星はあるけれど、帰りたい星はない。
私が私として、嫉妬も諦観も演技もなく生きられる、私の銀河系は、どこにあるのだろう。