ポスト
ブラジルとチリのPK戦が決すると、もう4時に近かった。
梅雨空のせいで、太陽の明確な気配はないけれど、心なしか明るくなってきていて、
久しぶりに朝まで起きていたなと実感した。
別にチリのファンでもサポーターでもないが、PKで最後のキッカーが外したことがなんとなく尾を引いていた。
後何センチの差だったのか、ボールはポストにはじかれて枠の外へ飛んだ。
ほんの数センチが、ときに数ミリが勝敗を分ける。
こんな数センチが、私にもあったかもしれないと思った。
それも、外したことも、ポストに当たったことすら気づいていないことが。
そして、それが何だったのか、気づかないままで、生を終えるのだろう。
失敗した、と自覚し、悔しさに泣くことは、幸せなのか、そうでないのか。
突然思い立って、お風呂に湯を張って、朝湯の贅沢を楽しんだ。
髪を乾かしていたら、次の試合時間になった。
完全に夜は果てに至り、そこからまた次の闇に繋がる明るみが始まっている。
いい具合にセットできた髪を、次の実況を枕に横たえた。