サル
オフィスのエアコン室外機が嫌な音を立てている。
除湿にすると暑いし、冷房にすると寒い。
冷房温度を28℃にすると暑く、27℃にすると寒い。
どっちつかずの苛立ちを、室外機の音が煽っている。
2階の窓からは、向かいにあるハンバーガーショップの2階がよく見える。
ポテトをつまんでいる指の、ショッキングピンクのベストの下から覗いた腕は、黒い袖に覆われている。
暑くないのかな、と思う。
それとも店が寒いのか。
ショッキングピンクの上にある頭の部分は、ほぼ金色に近い髪で、ここからだと「おサル」に見える。
猿回しのおサルが、よく派手なちゃんちゃんこを着ているが、あんな感じ。
これがすこしでも見知った人であれば、間違いなく「ヒト」に見えることだろう。
知らない人を「ヒト」と意識して尊重するには、何らかの努力または心がけというものが要るのかもしれない。
ポテトをつまんだ指で、金色の髪をかきあげるあの人からは、私はどんな猿に見えているのだろうか。