七夕はいつも雨降り
雨が降ると、織姫と彦星は逢えないのか。
雨が降ると、天の川が洪水になるのか。
でも、天の川は水じゃなくて星なんだから、渡れないということはないんじゃないの?
いや、だとすれば、そもそもカササギの橋など要らないことになる。
違う、違う、雲の上には、雨は降らないんだ。
だから、天の川はいつもそこにあって、逢おうと思えば、天の恋人たちはいつだって逢えるんだ。
だから、昨日も、ふたりはちゃんと逢引きしたはず。
良かった。
七夕は、いつも雨降り、という印象がある。
梅雨時だし。
だから、ことさら、それを残念がった記憶はない。
幼稚園も保育園も行かなかった私には、七夕飾りを作ったことも、短冊に願いごとを記した経験もない。
もし、機会があったとしても、願いごとはたくさんありすぎて、短冊には収まらず、忍法秘伝奥義のごとき巻物になったかもしれない。
あれはいったい、誰へのお願いなんだろう?
叶えるのは自分。
いつだって自分。
それから、手を貸してくれるありがたき「ニンゲン」。
神さまができるのは、昨日の残り物のカレーを、ちょっと美味しくしてくれるくらいのこと。
マジックソルトのようなもの。
でも。
風に揺れる七夕飾りは好きだ。
特に、時期を損ねて置き去りになり、雨に濡れ朽ち果てていくそれに、私は何を重ねて美しいと感じているのだろうか。