未雨
頭痛薬を飲んで、ついでに朝から開け放していた窓を閉めた。
雨はまだ降っていない。
雷鳴だけが、思い出したように轟く。
すこしだけ、寒気がする。
テレビ画面には、雹。
雪が積もったようになっている映像に季節を見失う。
スコップで掻いている半袖姿の住民。
買物に行くのが億劫。
熱はないが、ないと思うが、ひどく身体がだるい。
雨が降りだしたら、出かけよう、と思う。
人に聞かれたら、笑われるだろう。
何が毒で、何が薬になるかは、その都度、私が決めたい。
闇が足らない。
黒雲が満ちていない。
何に対してかわからぬものに握りしめたはずのこぶしに、力が入らない。
ふと気になって、家電についているデジタル時計の数を数える。
5つ。
多いのか少ないのかわからない。
そんなに必要ない、ということだけはわかった。
大雨警報を告げるテレビのスイッチを落としてみる。
雨音は、まだ聴こえてこない。