錯覚
バスルームにウォールシールを貼った。
カランや鏡のある面と、ドア部分を除いた3面の壁。
湯船に浸かってみると、これまでと違った非日常感が嬉しい。
日常に安らぐ、という人も多い。
いつもと同じ、という安心感。
でも、私は。
いつもと違うことに寛ぎを覚える。
たとえば。
自宅を、旅先と錯覚するようなしつらえにしたい。
日常を非日常らしくすることで、私は毎夜の安らぎを手に入れることができる。
チェーン店は嫌いだ。
知らない町で、知っている看板に出会うとホッとするという人もいるが、私はそうではない。
叶うならば、いつもいつも、見知らぬ町で、違う街並みを眺め、違うベッドで眠りたい。
その非日常こそが、私を休ませる。
そのために、少ない金額でできる錯覚を、私は必死に探し求めている。